今年4月から定期接種となった子宮頸がんワクチンについて、厚生労働省は積極的勧奨の一時的な差し控えをすることが決まりました。即ち、中止ではなく「子宮頸がんワクチンの接種を積極的には推奨しませんが、本人(保護者)が有効性とリスクを理解した上で希望があれば、定期接種として接種はできますよ」というなんともはっきりとしない決定です。
昨年より、このワクチン接種直後に接種直後の痛みによる失神症例が多く報告され、注意が促されていましたが、今回の決定に至った要因は、「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」という副作用が十分に把握評価できていないためで、今回の決定は調査の結果がでるまでは積極的に接種することをお勧めしないというものす。
CRPSは、外傷(骨折・打撲・捻挫・注射など)をきっかけとして、慢性的な痛みが起き、それに加えて、局所のむくみ、皮膚温度の異常、発汗異常などの症状を伴うことがあります。手足を動かせなくなったり、もともとの外傷を受けた部位だけでなくて、全身に広がって行く事もあるようです。子宮頸がんワクチンのみに関連した疾患ではなく、他の原因でも起こりうるものですが、この病気自体の全体像が把握されておらず、診断できる医師も非常に限られているのが現状です。子宮頸がんワクチン接種での発症が他の要因以上に多いのかなどはっきりしたことはわかりません。日本より先に、接種が導入された諸外国でもCRPSの報告がありますが、接種が中止になった国は今のところないようです。
ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチンは、2009年12月にサーバリックス、2011年8月にガーダシルが発売され、今年3月末までに推計328万人に接種されています。そのうちCRPSと思われる報告は43人とのこと。一方、子宮頸かんはおよそ年間9000人が発症し、年間2700人が死亡しています。ワクチンで、子宮頸がんを100%予防できる訳ではありませんが、ワクチンで予防できる16型・18型ウイルスは日本の子宮頸がんの原因の6割程度と言われており、子宮頸がん発症のリスクを6割は減らせることになります。
当然ながら接種したら安心しないで、成人後は子宮頸がん健診を受けることも忘れてはなりません。
100%安全なワクチンなど存在しませんが、しばらく厚労省の調査結果による判定を待つことになるのだと思います。しかし、現実的には、接種をされる方は極めて少ないでしょう。子宮頸がんワクチン接種を希望される方および保護者の方には現状をしっかり説明していきたいと思います。
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